アメリカでの生活とアートについて

STATEMENT

In the year 2000, I lost my hearing due to a condition known as congenital sensorineural hearing loss. I went from being able to hear to being completely deaf. In 2012, I received a cochlear implant that led to a complete change in my audio, visual, and temporal perceptions. I transitioned from a two-dimensional, monochromatic, soundless world to a blended, two and three-dimensional world with vibrant colors and sounds. Regaining my hearing through the use of the implant has had a profound influence on my work.

This has involved me going beyond the traditional instruction that I received at Tokyo University of the Arts while completing my PhD in Japanese painting. Traditional painting imposed restrictions on my choice of media and materials, and inhibited my new perspective. I felt a strong desire to break down the barrier of two-dimensional visual space and challenge the traditional notions of beauty by using sonic elements in my work.

 I am looking to alter the boundaries of aural space: sharing sounds we ignore in our daily lives, and sounds we have yet to discover. My painting and sculpture in my installation prompts viewers to question their preconceptions, further inspiring them to become more empathetic and accepting of others. To this point, I have been exploring the borders and limits of communication between disabled and non-disabled people.

Through my artwork, I am exploring ways for people to connect with others—people that they perceive to be different—by creating a mutual understanding. I use painting, sculpture, architecture, sound, and performance to convey my art through installations, as well as create musical instruments out of everyday objects. Many of my installations are interactive projects that involve my audience. My hope going forward is to collaborate with deaf people and professional dancers, and invite hearing people to my sound sculpture and painting installation.

Questions I explore in my artwork:

1. How can people communicate with each other?

2. How do people recognize communication barriers?

3. How can people create an effective space and systems for communication?

In conclusion, I wish to create a community inclusive of both hearing and non-hearing people to learn about barriers they have had to overcome. I look forward to contributing my experiences, techniques, and ideas to their artistic journeys as they will contribute to mine. I want to break the barrier between disabled and non-disabled people through artistic language.


私のアートは、人々の間に存在する聴覚と視覚に関わる境界とコミュニケーションの接点や限界を探求したコンテンポラリーアートを表現している。特に空間において、素材・音・言語がどのように視覚・聴覚空間に相互作用して知覚の境界を超えることに寄与するか追及している。このテーマは、私自身が先天的な聴覚障碍者としての様々な経験から得た問題意識によるものである。作品において日常生活で聞く音を再確認し、また偶然性による音楽を観客と共有することにより、観客同士、あるいは私と観客との相互の理解をもたらそうとしている。そのために、絵画、彫刻、建築、映像、音響などの手法を駆使したインスタレーションやサウンドオブジエクトを制作し、観客が自らの持つ先入観に対して疑問を投げかけるよう促している。この促しにより観客が自分とは異なった他者を受け入れ、共感するきっかけになることを私は願っている。特にインスタレーションでは、例えば空間に合わせて変容する素材・音・言語同士の関係性や観念などの表現により、観客、ダンサー、聴覚障碍を持つ人たちの参加を可能とするインタラクティブなプロジェクトを採用している。

2012年12月より右耳に人工内耳を装用したことにより、私の音声、視覚、および時間の知覚には大きな変化があった。それは、深い海の底から広大な空を見渡すような知覚への変化であった。このことは、私の色彩と空間感覚、言語感覚、またそれに基づく表現活動において大きな影響を与えている。

私は、当時日本画を中心に表現活動をしていたが、人工内耳による自身の感覚の変化を経験して、日本画におけるメディアや素材の選択の制限が、自分の表現における新しい視点を妨げてしまっていると感じた。また、自身の新しい作品へ様々な素材やテクノロジーを導入することで、人と人との間に相互の作用を生み、アートの感性が人々を繋げる可能性を作りだせるとも考えた。これらの着想を作品において表現し、人々へ相互作用をもたらすことで、社会における境界線をも超えられるのではないかと考えた。私はこの着想を実現するために、さらなる人々の相互理解を深める方法を探りたいと考え、米国のメリーランド・インステチュート・カレッジ・オブ・アート(マイカ)の修士課程Multidisciplinary Studies(学際的芸術研究専攻)に留学した。

マイカで日本と欧米の文脈と概念の違いを研究することで、コンセプトと表現を体系的に発展させ、その成果を修士論文「空間における音」として提出した。これが私の現在の表現の土台となっている。

私は、制作および表現活動を続け論文を執筆する中で、表現に通底する問題意識は日本画時代と現在の作品においても変わらず地続きにつながっており、障碍者と健常者の世界もまた、同様にその境界線はグラデーションのように広がっていることに気が付かされた。私にとって日本画は自身が抱えるディスコミュニケーションの問題を顕在化させ、自己を投影するのに適した媒体であった。そして日本画を音や彫刻、空間という媒体と総合することにより、社会的な障壁を超えていく手段を見出した。また医学的に見れば誰もが機能障害を持つが、日常や社会生活に制限が生じた時に差別や分断の問題が生じる。この問題を追及することは、身体と認知による制限、および観念的に作り出された障害と普通の境界線と壁が、今日の私たちの生活にどのように影響してきたのか、いかにすればその境界線と壁を超えることができるのかを追求し明らかにできると考えた。

私はこのテーマから、様々な社会的背景を持つ存在がお互いに理解し合える多角的なアプローチ方法を模索している。アートを通じて聴覚障碍と聴者の境界線を超え両者が相互作用することにより、マイノリティとマジョリティがそれぞれ互いに発信することが可能な「多様性社会」実現を目指す。現代社会における問題の多くは、その背景に分断や境界の問題がある。例えば、アメリカにおける人種差別や移民排斥は、その背景に移民やマイノリティへの隔離や制度、偏見による歴史があった。それでも多様な移民がアメリカの経済と社会を支え、依然深刻な分断がありつつもマイノリティの能力が評価され活躍できる国となった。現代の国際社会では1990年代以降歴史問題、ジェンダーなど様々な問題の解決に向けた「多様性社会」へ向かおうとする世界的な運動が起きている。今後日本でもますますマイノリティへの機会均等やマジョリティとマイノリティの共生の手がかりを模索することが必要とされていくだろう。そのため、私は自らの表現を通し異なる人たちが共存し、それぞれの違いを発信することが可能な「多様性社会」の実現をしていくための契機を作りたい。