アメリカでの生活とアートについて

マンハッタンの美術館情報(8)ホイットニー美術館

ホイットニー美術館(Whitney Museum)

今回のホイットニー美術館はジュリー・メレツ (Julie Mehretu)の回顧展が中心でした。

日本に住んでいる人でも画集などで彼女のペインティングを見たこともある方が多いと思います。実物を見ないとどのように描いてあるのかとても分かりづらい作品で、従来の油絵やアクリルと違いセル画のようです。

この作品は巨大化しても細やかなディテイールを維持させているところに見応えがあります。アーティスト21というビデオを見ると、彼女はスタッフとスライドを使って建物のラインを転写していくそうで、透明感とデジタル感が魅力的です。https://art21.org/watch/extended-play/julie-mehretu-workday-short/

アメリカのアートが巨大化するのはペインティングであれ彫刻であれ、制作のために膨大な資金を投資し多勢のスタッフを駆使することができるからです。いわば巨大な作品は、個人の制作というより総合作品と言っても差し支えないと思います。

言い換えれば、制作者と作品にはある種の距離があるような感じです。それでも美術館と画廊が広いため、違和感がなく見れるところが欧米の現代アートの面白さです。

今回展示を見てもっとも興味深かったのは、初期の作品や現在のドローイングが出品されていたことです。やはり手中に収まる実験的な作品の方が、アーティストの原点や世界観が見られます。

立体作品で知られるリチャード・ロング(Richard Long)やクレス・オルデンバーグ(Claes Oldenburg)も、小作品やドローイングの方に個人のセンスや技術がはっきり出ています。

見終わってエレベーターに乗ろうとしたら、横に小さな緑のライトで染められた展示空間がありました。入ってみると音が聞こえてきたので、説明書を読むと虫の音のようです。

室内の手前の赤く塗られた壁にはリサーチした虫の資料やドローイングがびっしり飾られていました。こちらの方が見ていて飽きず、しばらく眺めていました。

その他の階はほぼ常設展で、前にも見た作品が多く展示されていました。