アメリカでの生活とアートについて

マンハッタンの美術館情報(7)メトロポリタン美術館

メトロポリタン美術館(Met)

次はメトロポリタン美術館(メット)です。メットは所蔵作品がとても多いので、私は通常企画展か特別展しか見ません。

以前は1ドルでも入れたのですが、コロナがあったためか正規の入場券を支払わなればなりませんでした。

企画展と特別展の場合、美術館の前に巨大な垂れ幕が飾られます。

アメリカの美術館に入る度にいつも思うことは、ゴッホの作品にはいつも人だかりができています。もちろん有名だからということもありますが、わずか10年の作家活動で無名のまま自殺したというストーリーも大きく影響していると思います。

入り口付近にはケント・モンクマン(Kent Monkman)の作品が飾られていました。ネットで見た時には迫力があったのですが、実際に見るとやや迫力に欠けています。入り口の広大な空間に設置されていたということと効果的なスポットライトがなかったからかもしれません。

この作品は、欧米の名作から構図を引っ張ってきたオマージュのようなペインティングですが、登場人物はアーティストの祖先である先住民が中心となって登場しています。

次はアリス・ニールです(Alice Neel、20世紀における最も偉大な肖像画家とされている)。彼女は人間喜劇を表現してるアーティストであり、アメリカの美術館でよく見かけます。描かれたポートレイトには、ゴッホやロートレックをどことなく彷彿させます。

アンディ・ウォホールとも親交があったようで、手術跡のある生々しい肖像画も描いています。この作品を数年前に初めてメットで見た時には、伝説となったウォホールの隠された内面の一部を感じることができたものです。

ハーレムに住む人たちの肖像画

アリス・ニールはハーレムに住む人たちや身近な人たちを多く描いており、画面からモデルたちの感情が伝わってきます。またプロポーションの歪みや独特な色彩を通し、はかない生の輝きを表現することに成功しています。

巨人(Sheated Giant)

ゴヤの作品です。ゴヤの版画のシリーズは私のお気に入りで、この作品は巨人(Sheated Giant)というタイトルが付けられています。この版画にも、晩年に描かれた黒い絵のシリーズに共通するような虚無と孤独感が伝わってきます。

月を背後にしつつ上空から照らされた強い光は、神の視座(教会の権威)を意識したのかもしれません。この巨人はダンテの神曲に出てくる巨人ニムロデのように見えますが、時代に翻弄された人々の心に住む堕天使の表現だったのかもしれません。

ダンテの神曲に出てくる巨人ニムロデ
キャロル・ボヴェ (Carol Bove)

最後は、この巨大な鏡の彫刻でキャロル・ボヴェ (Carol Bove)の作品です。雨の中でも圧倒されるほどのインパクトがあり、もし晴れていたら一層神々しく輝いていたことだろうと思います。

この作品を制作した彫刻家は、ピースギャラリーやカゴシアンギャラリーと同様にトップレベルの画廊であるデビッド・ツヴィルナーギャラリー(David Zwiner)で取り扱われているアーティストです。アーティスト(Artists)をクリックするとアリス・ニールや草間彌生、河原温の名前が見えます。https://www.davidzwirner.com/artists/carol-bove

今回、久しぶりにメットを訪問して気がついたことですが、コロナ以降美術館でもデジタル化が加速していたということです。

例えば各部屋にあるバコードのスキャンを携帯で読み取ると、現在位置やメットの地図が見れるようになっていました。また事前登録による予約制になったことで人も減り、カバンの中をチェックされることもありませんでした。

こうしたIT技術の整備に伴い、透明性や多様性がますます求められていくであろうことは疑いの余地がありません。