アメリカでの生活とアートについて

マンハッタンの美術館情報(5)モマ美術館

マンハッタンでもボルチモア美術館と同じように、黒人のアーティストが多く展示されていました。もしかしたら差別問題を促すことだけではなく、行き過ぎた文明に対する身体性への揺り戻しが起きているのかもしれません。

オリンピックが近いためか、今回は日本人の展示が多かったです。そしてアメリカでもイギリスでも、もの派の評価は非常に高く、どの美術館でも多く陳列されていることに変わりはありません。

以下作品を載せておきます。草間彌生などの作品もありましたが、今回は水墨画などの新たな作品の追加がありました。

それでもメトロポリタン美術館の日本部門のコーナーのような水墨画が主体なのではなく、例えばジョン・ケージやエバ・ヘッセなどの作品と並べられています。つまり、もの派のように西洋の文脈にリンクしつつも影響を与えた作品が中心となっています。

モマは改築したばかりですので、以前より多くの作品が飾られています。もし訪問する機会があれば1日たっぷり時間を取ると良いでしょう。

途中で疲れたので外で軽くランチができるところを探しましたが、どこにも見当たりませんでした。ユニクロにあるスタバも全てクローズでしたので、モマに戻り美術館の庭園でパン一つとコーヒーを一杯飲みました。庭園の方が開放感があり、見応えのある作品が多く設置されていますので気分転換をすることができます。

次は日本でもよく知られたアレクサンダー・カルダー(Alexander Calder)の特別展示です。

世界中の美術館に常設されている、この軽やかな彫刻はいつ見ても美しいのですが、美術の歴史を辿ればこの作品も身体と重力の関係を表現しています。ペインティングで言えばパット・ステアー(Pat Steir)も同じように絵の具の重力と肉体との共演を表現しており、欧米のアートシーンを代表する存在です。

パット・ステアー(Pat Steir)の作品
https://www.levygorvy.com/exhibitions/pat-steir-considering-rothko/ 
Levy Gorvy galleryは、アレクサンダー・カルダー(Alexander Calder)も取り扱っている画廊です。

この展示では代表作の陳列というより制作過程、初期の作品に焦点が当てられており、アーティストが複雑な試行錯誤を経て徐々に完成されてきたのだということが伺えます。

多くの優れたアーティストは、実にドローイングや実験作品を多く残しています。例えばデュシャンは便器の作品で有名ですが、もしフィラデルフィア美術館を訪問すればそこでも多くの作品を見ることができます。

マルセル・デュシャン(Marcel Duchamp))

次は常設展からピックアップしますが、どれも欧米では有名なアーティストです。

サーニャ・イヴェコヴィッチ (Sanja Iveković)の作品です。オノヨーコの「カット・ピース」に似ていますが、顔というデリケートな部分に被せられた女性のストッキングを少しずつ切って肌を露わにしていきます。

以前私のブログでも触れましたが、作品を講評してくれたキャロニー・シュニーマン(Carolee Schneemann)の作品です。今回は彫刻も出品されており、傘が突然回ったりランプが点滅していました。

マーサ・ロスラー (Martha Rosler)

マイカでの抽選に漏れたので講評は受けていないのですが、マーサ・ロスラー (Martha Rosler)の作品です。世界的な評価が高く、講演の時はキャロニー同様にホールが満員になっていました。

私のブログでも触れた、ジョーン・ジョナス (Joan Jonas)です。彼女は私のキネティックペインティングをとても気に入ってくれ、私の顔を携帯で撮影して写真フォルダに保存してくれました。

ワンダーウーマン
ダラ・バーンバウム (Dara Birnbaum)

上のビデオ作品は、ハリウッドでもリメイクされたワンダーウーマンです。モマの入り口に設置されており、大学でもしばしば重要な作品として取り上げられていました。映像を手がけたのは、ビデオアーティストであり、フェミニストでもあるダラ・バーンバウム (Dara Birnbaum)です。

バーネット・ニューマンのブロークン・オベリスク
https://www.theguardian.com/artanddesign/jonathanjonesblog/2008/oct/22/barnett-newman-obelisk

以前は長いことバーネット・ニューマンのブロークン・オベリスクが入り口付近に展示されていたのですが、これはキング牧師に捧げられたものだそうです。このことからも、美術館が非常に民主的な政治のスローガンのもとに成り立っていることが明白です。

日本とはその点、アートに対する考え方が違うのでその点に留意した方が鑑賞しやすくなるはずです。もちろん彼らにも高い美意識と審美眼があり、それを否定することもできる土壌が根付いています。

最後の作品はアマンダ・ウィリアムズ (Amanda Williams)です。非常にコンセプチュラルな作品で境界(ボーダー)を曖昧にすることに挑戦している作家です。コロナで誰もが触れなくなった建築での特異な空間を問題意識として取り上げており、この作品の面白いところは3、4、5階と上がるにつれて見え方が変わってくるところです。

この入り口付近に置かれている作品の内容とアーティストのバックグラウンドに注目することが、アートシーンの流れと方向性を見定める上で参考になると思います。