ワシントンDCに行きました。ボルチモアから僅か1時間で、往復8ドルです。
目指すはハーシュホーン美術館(Hirshhorn Museum https://hirshhorn.si.edu/hirshhorninsideout/)です。スタジオに訪問してくれた数人のキュレーターたちから「パット・ステアー(Pat Steir)のノイズの表現と、リー・ウーファン(Lee Ufan)の空間感覚を参考にするように」と言われていたので、心待ちにしていました。
パット・ステアーは1940年生まれ、ミニマリズム、コンセプチュラルアート、アブストラクト・ペインティングの先駆者です。
代表作は常にモマ美術館で見られ、もしフィラデルフィアに行く際があれば、バーンズコレクションという美術館(Barnes Collection https://www.barnesfoundation.org/)でも巨大な滝の作品を見ることができます。

静かなる滝と言ったところだろうか、すーっとした音を感じます。 若き日のパット、生の躍動感を感じます。
絵の具を上から流して表現された滝は生き生きとしており、今なお彼女のイマジネーションは枯衰していません。
今回の展示も美しい色彩で構成されており、近くで見ても驚くほどデリケートに表現されていました。

ハーシュホーン美術館は円形の建物になっていますので、建物の中をぐるぐる歩き回ることになります。最初に白い滝があり、カラフルな色彩の滝が続いて、最後にネガポジ反転した黒い滝で終わる。あたかも「円」の思想をインスタレーションで表現したかのようです。
同じくリー・ウーファンの石と鋼鉄を使った素晴らしい作品も、パットと同様に世界中で見ることができます。彼は韓国から日本に渡ってきた人で、多摩美術大学の名誉教授です。また「もの派」という日本の美術運動を理論化したことで欧米でも有名です。
いつも美術館の中で作品を見ることが多いのですが、今回は外でも展示していました。
この作品は白い砂利があることで、日本の禅寺にある石庭を思い起こさせ、また背後のビルとの構成によって「借景」の表現を想起させました。芝生との組み合わせがユニークであり、あかたかも西洋と東洋の交差点のようです。
また、美術館の中庭には噴水があるのですが、その周りを鏡のようなスチールの板で覆っていました。
一方で美術館の中で展示されていたペインティングの「ダイアローグシリーズ」は、空間が完璧に美しく配置されていたので、たまたまそばにいた小さな蜘蛛が作品より目立っていたほどです(笑)
2人の優れたアーティストに共通する要素は、50、60年代以欧米のアートシーンで旺盛したミニマリズムの表現です。
そして、この特別展示から浮かび上がるのは、東洋への眼差しです。