アメリカでの生活とアートについて

聴覚障碍者の英語について

留学生にとって一番大変なことは、やはり英語のコミュニケーションです。 修士1年目の時にはストレスで腹痛を起こし、病院に2度運ばれたくらいです・・・。留学前は、TOEFLのライティングとリーディングの高得点を取れば留学できる!と思っていましたが、現実は甘かったです。

マイカの生徒たちは進学のための訓練を受けてきた人が多いため、学部生が相手でもついていくのが大変です。特にディスカッション(討論会)になると、健聴者ですらポイントを掴むことが難しいそうです。当然筆談で会話している暇がないので、必死で声に出したり携帯の音声文字起こしを活用しています。

私にはプロのノートテイカー(文字通訳者)がつきますが、全ての大学に障碍を持った生徒を受け入れる体制が整っているわけではありません。大学側の金銭的負担もあるため、どうしても健常者に近い生徒が求められます。

ワイファイを通じて、アイパッドに通訳の文字が出てくる。
皆熱心にノートを取っています。

ノート通訳があるからといって、授業がスムーズかというとそんなことありません。パソコンに打ち込むタイピングがとても早いんです。その上、TOEFLで勉強したようなアカデミックな文章だけではなく、口語的な言葉も混ざるため最初は全く読めませんでした。そもそも文字情報だけで内容を理解することはとても大変なことです。

全体の講義では教授が一方的に話すことはありません。基本的に生徒と対話をしながら進めていきますので、日本の大学より複雑で高度です。

そのため私が討論会のために工夫していることは、グループ批評会の前に必ず事前にメモをしておき、状況や流れを読みながらリアルタイムで修正することです。当然私の英語の発音に問題があるため、皆に内容が伝わらない時にはノートテイカーに代理で伝えてもらうこともあります。

個人講評の時には、なるべくノート(パソコンやアイパッド)に起こされた文字通訳だけを読まないことにしています。アーティスト、キュレーター、美術館関係者、教授たちの口の動きとイントネーション、表情、身振りを確認しながらメモにとりつつ、後からノートをもう一度丁寧に読みます。

中国の女性とチベット人の男性です。(掲載許可済み)

このお二人さんも英語に悩んでいた人たちです。中国からの留学生は基本的に英語がかなり話せるのですが、左にいるソフィアさん(ニックネーム)はディスカッションの時にはずーっとだんまりでした。しかも私とペアでループディスカッションのリーダーになった時には、なんと当日授業を欠席していました・・・。そのため、私が一人で討論会をまとめたので、かなり大変でした。思い出したくもない・・・。けれど最後には、教授から内容がとても素晴らしかったと褒めていただいたので、ほっとしました・・・(笑)

それでも彼女は、高度な最先端のバイオテクノロジーのテクニックと素晴らしい発想力を持った人です。人間の肌に近い組織と機械をミックスしたり、人が近づくと不思議な音や匂いが流れる作品を作っており、どれも高度な作品ばかりで日本の美大の学生たちよりずっと完成度が高かったです。

右側の男性はチベットからきた方で、アメリカの某大学の学部を卒業した後にマイカに来ました。作品は平面が基本なのですが、世界中にある弾圧問題と移民問題をテーマにしており大変興味深かったです。プライベートで話すと、身内が中国政府に迫害されたり、幼いと時にインドまで亡命したりと大変苦労してきているのですが、ご本人はいつもにこやかに明るく振舞っています。

このお二人とても仲良しです。ここでは国の政治的な問題を乗り越えて皆繋がっていきます。そのツールが英語であることを考えれば、時間をかけて学ぶ価値があると思います。