アメリカでの生活とアートについて

マンハッタン2   ホイットニー美術館

マンハッタンでは、2年に一度だけのホイットニー・ビエンナーレも開催されていました。今回は社会問題の提起やアーティトの文化背景を感じさせる作品が多く、4年前に見た時の展示と雰囲気が違っていました。個人的に注目したのはキム・クリスティンの作品です。彼女はサウンドアーティストとしてデビューした作家で、現在ベルリンに在住しています。

今回の作品は鉛筆でグリグリ書いたドローングの拡大印刷紙だったのですが、米国で障がい者のサポートがあまり充実していないこと、聴者たちに理解されないことへ怒りとは裏腹に美しく表現されています。この作品はユーモアのセンスも入っているようで、マイカの助手さんに見せたらクスクス笑っていました。

私の大学マイカでも、確かに障碍者へのサポートへの対応と判断が難しいようです。しかしアメリカの障碍者たちは高校生まで法律によって自動的にサポートされますが、大学では当事者が自ら申請しない限り支援は行われません。なぜなら誰かにサポートされるのではなく、社会で独立した人間として扱われたいという生徒もいるからです。

私は日本画出身なのでペインティングに目がいってしまうのですが、アメリカでは日本で考えられないほど多様なペインターたちがいます。数年前に日本の某現代アートの公募展でローラ・オーウェンス似た作品が流行っていましたが、アメリカで多くの作品を見ると彼女は相当なテクニシャンで、彫刻、インスタレーションまでマルチにこなし、もはやどうやって制作しているのか全くい分からないクオリティの高さです。最近同じ会場で見たフランクステラの作品にせよ、実物を見ると完成度が高過ぎて感嘆するしかないという印象があります。映像で見るCGの世界がそのまま現実世界に出てきたかのような複雑さです。

多くのスカルプチュア(彫刻)も展示されていましたが、デジタルツールを活用しつつ社会問題を提起したり、移民を象徴するかのような表現、または伝統的な作品まであります。または、これでもかとテクニックを誇示するかのようにびっしり細部まで作り込んだ作品があるかと思えば、あっさりシンプルに制作した作品も設置されていました。

日本と違うのは多様性があり、インタラクティブに観客とリアルタイムで共有しようとする欲望が感じられます。また重要なのは日本の現代アート、ペインティング、スカルプチュアなどとは全く違うコンテキストとスタイルがあるということで、歴史や展示、画廊での展示から流れを掴むしかありません。

日本でこうした視点を持つことはなかなか想像し難いのかもしれません。また古典的な手法、あるいはテクノロジーを活用させた小規模から中規模程度のインスタレーションも多く設置されていました。

この映像はホイットニー美術館の委員長が経営しているthe safariland groupという兵器会社による催涙弾ガスの抗議作品でした。アメリカの国境付近ではメキシコからの移民者を追い払うために催涙ガスなどが使われているそうで、多くの人が暴力を振るわれたり惨殺されていました。まるでこの会場のメインであるかのように、映像室には多くの観客が込み入っていました。