アメリカでの生活とアートについて

マンハッタン1 ニューミュージアム

先月9月15日から16日まで授業の一貫としてマンハッタンに行きました。2日間だけの滞在でしたが、私がとりわけ教授から勧められたのはニューミュージアムで展示されていたアルゼンチン出身のビデオアーティストMika Rottenbergの作品です。美術館に入ってみるとなんとも言えない不思議な作品が多く展示されていました。壁に唇のオブジェだけがポツンとくっつけられていたり、壁からニュッと出たカツラの一部だけがぴょんぴょん動いてたりしていました。観客が覗いていた口のオブジェの中を覗いてみると映像が見えたのですが、その中にも口があり煙や液体を吐いていました。かと言えばお尻がにゅっと覗いたりと夢世界のようなシュールな光景が広がっていて驚きました。

また同じ部屋には、ダストと滴り落ちる水滴の下に観葉植物があったり、熱いフライパンの上に水滴が一定間隔で滴り落ちてジュワーっと蒸発しています。リズミカルなパターンが繰り返されており、ある種の奇妙な感覚が喚起されます。アルゼンチンでは自然な光景なのでしょう、生活の中からユーモアのある光景を切り取って皮肉った印象があります。

違う部屋に行くと、本物のシーリングファンがくるくる回っていたり、万華鏡のような美しくもグロテスクな映像が上映されていました。

別の部屋ではピノキオのように鼻を伸ばした女性が、くしゃみをしながら汚いスパゲッティを大量に落とし、下の階には真珠採取業の労働者たちが働く異様なシーンが映されており目が離せませんでした。その上映室の隣では、実際に労働者によって採掘された真珠の袋や真珠で作られた観光客向けのうさぎのオブジェがあり、アルゼンチンでのアジア系女性労働者の過酷な労働状態を表現しているようです。

行きと帰りのエレベーターには天井にテレビがあり、作家がガラスをハンマーで叩いているだけなのですが、とてもカラフルな色彩がアルゼンチンらしく労働者の単調な動きを表現してるようです。

欧米でのアートは必ずしも美しいもの飾るものとは限らず、政治的な批評であったり、アイロニーが込められていることも多いです。それでも最高峰の美術館で展示される作品に共通しているのは、間違いなく生き生きとしており、想像力溢れた表現と手法の面白さ、センス、徹底したクオリティの高さです。